岸壁

岸壁を見るとき なぜだろう 安らぎを感じる

打ちつけてしまったら身体は裂けてしまいそうなのに

落っこちてしまったら死んでしまいそうなのに

ただ自分では捉えきれられないほどの

時間と重さが閉じ込められているような気がして

なぜか 心が安らいでしまう

 

岸壁のような

どうしようもないような歴史の蓄積や

死んでしまえば楽になりそうな現実のまえで

ほんのすこし 安らぎを感じる

心が溶けるようなあなたの笑顔をみたとき

あなたがどうしようもなく悲しそうな顔をしたとき

あなたに強く抱きしめられたとき

あなたが静かに横をむいたとき

......。

それでもわかってる それでも

安らぎなどとは程遠い

岸壁に打ち付けられるような夜を

突き刺してくるような夏を

 

思い出のなかにばかり生きてしまって

出会いも別れもすべて枯れることなく

ずっとずっと波が押し寄せてきている

いまわたしの身体に

あまりにおおらかな風が吹いている

それでもわかってる それでも

 

그래도

 

不意に死んでしまいそうになる夏の夜に

わたしひとりを おいていく海原に

はなびらを散らす

それでも